挑戦する気持ちを忘れないでください|海外大学進学体験談

挑戦する気持ちを忘れないでください

海外大学進学:挑戦する気持ちを忘れないでください

前略

親愛なる日本の皆様

 イギリスの夏は短く、9月初旬というのにもう冬の寒さをしのぐ方法を考えなければいけません。しかし今ではこの時雨の国も、私の愛する第二の故郷になりました。

 私が渡英を決意したのは29歳の時です。当時私は日本で仕事をしていましたが、自分の人生に疑問を感じていました。このままでいいのだろうか、変わるべきなんじゃないだろうか。そう思って苦しんでいた時に、大学時代に海外を訪れた時の気持ちを思い出したのです。その時、私は生まれて初めて、自分が「日本人」であることを知りました。私たちは常に世界地図の上に存在し、一人一人が日の丸を背負って生きています。世界に生きる「サムライ」なのです。日本の文化を学んだものとして、もう一度世界で学び直したい。その気持ちが後押ししてくれました。

 渡英直後は、惨憺たるものでした。年齢の壁もありましたが当然英語には慣れておらず、周りの友人たちが流暢な英語を話し、読み、聞き、書く中、一人付いていけない自分に落ち込み、苦しみ続けました。しかしそんな私に対しても、キングスの先生たちは決して諦めず、根気よく教え続けてくれました。時には、授業が終わってからでも。素晴らしい友人たちとの出逢いもありました。彼らはうまく話せない私にも決して嫌な顔をせず、わからない箇所を教えてくれました。そして、仲間でいてくれました。彼等との友情は、きっと生涯に渡って続くでしょう。

 1年の後、あの劣等生の私が、英国の大学院入学が現実的になるくらいの英語力を身に付ける事が出来ました。それはひとえに、私を支え続けてくれたキングスの先生方やスタッフ、そして世界中から集まった素晴らしい友人達のお陰です。彼らには、感謝の気持ちで一杯です。

 日本の皆さん。もしも自分の生き方に疑問を感じているのなら、挑戦する気持ちを忘れないでください。勿論、何かを新しく学ぶというのは、簡単なことではありません。それも全く違う文化や風習、言語の中でです。苦しむ事も多いと思います。しかし、しばらくの後、自分がたくさんの宝物を貰っていた事に気が付きます。それは、苦しんでいる間には気付けないのです。中には、「自分なんかには」と思う人もいるかもしれません。でもそれは違います。何故って、それは私たちが日本人だからです。礼儀や礼節、物事を諦めない心と智恵を持った、強く優しい民族だからです。私は、英語が話せないということだけで、この愛に溢れた人々が世界で活躍出
来ないのが悔しいのです。

 どうか、自分のことを信じてあげて下さい。そして、あなたの目の前にはいつも宝物があることを忘れないで下さい。それに触れるか触れないかを決めるのは、あなたの気持ちと、ほんのひと欠片の勇気だけ。日本の皆さんの新しい門出と、あの日の丸の様に燦々と輝く私たちの未来に敬意と願いを込め、ここに筆を置きます。

草々

榛葉隆太